ドローンが正確に飛行する上で欠かすことのできないテクノロジーが、フライトコントローラー。そのフライトコントローラーのオープンソース・プロジェクトが、ArduPilot(アルデュパイロット)。AuduPilotは、 https://ardupilot.org/ を中心に、世界中からドローン関連エンジニアが参加し、新たなコードの開発や研究成果の公開など、積極的な情報発信と交換を推進している。
ランディ・マッケイ氏は、10年前からドローン関連のソフトウェア開発に参加し、現在では https://ardupilot.org/ の中心的な存在として、コミュニティの活動をサポートしている。ドローン産業の鍵を握るフライトコントローラーのトップエンジニアのマッケイ氏に、ドローン産業のビジョンとオープンソースの未来についてインタビューした。(田中亘)
カナダ生まれで日本とドローンが大好きなエンジニア
ArduPilotとマッケイ氏の深い関りについて紹介する前に、まずは氏のプロフィールについてまとめておこう。マッケイ氏は、カナダのキングストンの生まれで、現在49歳(2021年5月現在)。
「はじめて日本に来たのは1996年です。その後、25歳で証券会社に就職すると香港やニューヨークやイギリスなどでシステムエンジニアとして働いて、今から20年前に日本が好きで戻ってきました」とマッケイ氏。
2001年に日本に戻ってきたマッケイ氏は、2009年にドローンを自作できないかと考えて、その製作にのめり込む。本人曰く「はまった」という。翌2010年に、メーカーフェアというイベントで日本のドローンベンダーを起業したエンルート社の伊豆社長と出会う。同時期に、米国を代表するドローンベンダーとなる3D Robotics社のクリス・アンダーセン氏とも出会い、ArduPilotの開発に加わることになる。
「最初は一人でドローンのソフトを開発しようと思っていました。そこで、会社勤めをしながら一年間ほどオリジナルのソフトを開発していました。そんなときに、DIY Dronesのサイトを通してArduPilotというオープンソースのフライトコントローラーを開発するメンバーたちと出会ったのです」と開発のきっかけを振り返る。
ArduPilotのルーツはDIY Droneというサイトの呼びかけ
DIY Dronesとは、3D Roboticsを立ち上げたクリス・アンダーセン氏が、ドローンの自作に取り組む人たちのコミュニティとして2008年に開設したブログ。当時は、オートパイロットの装置全体が$10,000〜$1,000(約103万〜10万円)と高額だったため、UAV(無人飛行機)を普及させるために、商用ベースではない安価なフライトコントローラーを開発するべきだとアンダーセン氏が唱え、その意義に賛同した人たちによるコミュニティが誕生した。そして後のArduPilotとなるフライトコントローラーの開発に、世界中から多くのエンジニアたちが参加した。マッケイ氏も、その理念に共感した一人として開発チームに加わった。
「2012年になると、ドローンの開発に集中しようと決意して、会社を辞めて東京から軽井沢に引っ越しました」とマッケイ氏は当時を振り返る。
軽井沢に居を移した理由は、本格的なドローンの開発に取り組むため。2012年当時は、まだ航空法は改正されていなかったが、東京ではドローンを飛ばす場所を探すのが難しくなり、本格的な飛行データを得るためには、心置きなく飛ばせる場所が必要だったという。
ライター:田中亘
IT & ドローン ジャーナリスト
1990年代からIT系ライターとして活躍し、インターネットやWindowsにエンタープライズシステムなど、海外の先端的なテクノロジーから日本企業の取り組みまで、幅広く取材してきた。現在も、AIやIoTにクラウドなど、デジタルトランスフォーメーションに関連するテクノロジーや事例を中心に執筆している。特に、B2B向けのITサービスやソリューションに精通し、国内外のIT企業を数多く取材し、産業新聞や業界紙に寄稿している。この数年は、ワークスタイル変革やシンクライアント、仮想デスクトップなどのテーマで連載や事例の取材を数多く行っている。一方、イベント・セミナーや企業の勉強会などで講師も務め、大手IT系ベンダーのプライベートショーやイベントでは、セミナーのスピーチ原稿やシナリオなども執筆する。
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