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ランディ・マッケイ氏がオープンソースのフライトコントローラーにこだわる理由

カナダ生まれで日本の軽井沢に居を構え、ドローンを飛ばすために欠かせないフライトコントローラーのArduPilot(アルデュパイロット)を開発しているランディ・マッケイ氏。なぜオープンソースにこだわるのか。その歴史を紐解く。(田中亘)


ドローンのコンテストで優勝してArduPilotがドローン業界で有名になる

ArduPilotがドローン業界で注目されるようになったきっかけは、オーストラリアで開催されたUAV Outback Challengeというコンテスト。オーストラリアのクイーンズランド州も協力するこのコンテストで、2012年と2014年にArduPilotはプラットフォームの部門で優勝した。


ちなみに、ArduPilotという名前の由来は、開発初期の頃に利用していたArduino(アルデュイーノ)というマイコン基盤にある。ArduinoのArduとPilotを組み合わせた造語。現在は、APMやPixhawkにNavio+などのハードウェアが利用されている。


ただ、ArduPilotそのものはオープンソースなので、どのようなハードウェアでも、ドライバなどの関連ソフトを開発すれば、フライトコントローラーとして機能させることが可能。実際に、Parrot社のBebopというドローンの飛行を制御するハードウェアに、ArduPilotをインストールして自動飛行などの機能を付加できる。


マッケイ氏は、ArduPilotの開発だけではなく、JapanDronesという会社とサイトを立ち上げて、軽井沢でAPMやPixhawkなどオートパイロット関連のハードウェアも販売している。このサイトの中で、オープンソースを推奨する理由が次のように記載されている。「(オープンソースは)信頼性が高く、無料である。ベンダーロックイン(特定の企業に依存する)の危険性が無く非常に柔軟性がある」


ドローンとフライトコントローラーの関係

ホビー向けから産業用に至るまで、ドローンが安定した飛行を行うためには、フライトコントローラーという制御システムが不可欠。フライトコントローラーは、各種のセンサーから得られる情報を瞬時に解析して、機体の飛行制御を行う。その基本は、センサーからの情報を得て計算し、モーターなどを制御するハードウェア回路と、そのハードウェアをコントロールするソフトウェアによって構成されている。つまり、PCやスマートフォンなどに類似したシステムだ。


もしも、フライトコントローラーがドローンに搭載されていなかったならば、4機のプロペラを手動で制御して機体の姿勢を維持しなければならない。それは、ほぼ人の能力では無理だ。浮上した機体には、風力や重力の影響と地球の遠心力など、さまざまな方向からの力が加わる。その多様な力のバランスを的確に判断して一定の位置にホバリングするだけでも、人手では至難の業となる。その複雑な処理をフライトコントローラーは、XYZ方向の力の変化を感知する3軸センサーや、3方向の加速度を含めた慣性計測を行い、操縦者が望む位置にドローンを移動させる。


ドローンを開発しているベンダーの中には、機体からフライトコントローラーまで、すべて自社で開発できる資本力と人材を誇る企業もある。しかし、多くのベンチャー企業では、すべてを内製化するのは難しい。また、飛行制御だけではなく、より高度な自動飛行を実現しようとすれば、フライトコントローラーに命令を送るプログラムの開発が必要になる。それは、PCのOS(基本ソフト)とアプリ(応用ソフト)の関係に似ている。


PCの市場でも、WindowsやMacといった特定の企業が開発したOSの他に、Linuxというunixの技術をベースにしたオープンソースのOSがある。ArduPilotの開発に取り組んでいるマッケイ氏をはじめとした開発チームのメンバーは、そのLinuxを手本としたオープンソースの普及を目指している。その最新の取り組みが、 http://ardupilot.org/ というサイトになる。


ArduPilotの新たな取り組み

2016年3月に、ArduPilotの開発に取り組んでいる中心メンバーが、 http://ardupilot.org/ というサイトを立ち上げた。このサイトで、マッケイ氏はCopter Leadという役割を担っている。


「ArduPilotの開発リーダーは、Jan Hirvinenというエンジニアです。開発の中心メンバーは、世界中で約20名ほどになりますが、その他にも多くのエンジニアが必要なときに開発に加わってきます。私の役目は、プログラムはできないけれども優れたアイディアや飛行に関するノウハウを持つ人たちの意見をArduPilotに組み入れるために、プログラムを設計し、パートごとに分かれて開発されているモジュールを連携させる、といったプロジェクトのマネジメントが中心です」とマッケイ氏。


ArduPilotが新しいサイトを立ち上げた背景には、2014年からスタートしたDroneCodeというオープンソース・プロジェクトとの決別がある。


「DroneCodeは、オープンソースの理念とは異なる運営を行ってきたので、ArduPilotの開発に携わってきたエンジニアたちは、自分たちであるべき姿にしようと決めたのです」とマッケイ氏は理由を述べる。


新たな取り組みを開始したArduPilotのプロジェクトは、オープンソースの理念に立ち返って、企業や個人などの参加を広く呼びかけている。


「ArduPilotは、これからもっと意味のあるグループを作っていきます。日本からも多くのエンジニアがArduPilotの理念に賛同して、積極的に参加してもらいたいと願っています」とマッケイ氏。


ライター:田中亘

IT & ドローン ジャーナリスト

1990年代からIT系ライターとして活躍し、インターネットやWindowsにエンタープライズシステムなど、海外の先端的なテクノロジーから日本企業の取り組みまで、幅広く取材してきた。現在も、AIやIoTにクラウドなど、デジタルトランスフォーメーションに関連するテクノロジーや事例を中心に執筆している。特に、B2B向けのITサービスやソリューションに精通し、国内外のIT企業を数多く取材し、産業新聞や業界紙に寄稿している。この数年は、ワークスタイル変革やシンクライアント、仮想デスクトップなどのテーマで連載や事例の取材を数多く行っている。一方、イベント・セミナーや企業の勉強会などで講師も務め、大手IT系ベンダーのプライベートショーやイベントでは、セミナーのスピーチ原稿やシナリオなども執筆する。