• ArduX Japan

ドローンエンジニア養成塾とランディ氏の取り組み

ランディ氏は、日本でドローンのソフトウェア開発に取り組むエンジニアを育てるために、ドローンエンジニア養成塾の塾長としても活動している。


その取り組みの中で、年に1〜2回のペースで開催されてきた塾生の発表会で、最新の技術動向や、自身の研究開発の成果を公開してきた。そうした取り組みの中から、2020年の発表内容を紹介する。(田中亘)


ArduPilotの技術概要と最新動向

ランディ氏は、ArduPilotの利活用を促進する最新デバイスとして、高性能なフライトコントローラーの最新機器を紹介する。その特長についてランディ氏は「最新のフライトコントローラーは、メモリとCPUが、5倍から10倍に進化しています。


そのおかげで、開発言語のC++だけではなく、Lua Scriptが使えるようになりました」と説明する。Lua Scriptは、汎用スクリプト言語であり、Perl、Python、Rubyと比較して高速に動作する。



ランディ氏が紹介したフライトコントローラーの多くは、CPUにSTM H7を採用し、衝突回避や非GPS下でのナビゲーションを可能にしている。加えて、ADSBによる有人飛行機の確認や、高信頼のIMUによる自律飛行のサポートなどが特長となっている。


次にランディ氏は、GSFというソフトウェアを紹介した。GSFは、複数のコンパスから得られた情報を判断して、正しい方向を見出す技術。単一のコンパスで飛行しているドローンは、地面に金属が置かれていたり、強い磁力によって、方向を見失う危険がある。


それに対して、GSFを利用すると、複数のコンパスから収集される情報を判断して、正しい方向を計算する。その様子を紹介した動画が映し出された。



さらに、飛行の安定性に貢献する最新デバイスとして、UBlox F9 RTK L1/L2 GPSが紹介された。


以前のGPS機器では、3m前後の測位ミスが起きていたが、このUBlox F9 RTK L1/L2 GPSでは、GPSだけで75cm以下の精度があり、RTKを組み合わせると10cm以下の精度が得られる。


特筆すべきは価格で、3万円から購入できる。これまで40万円以上していた高精度GPSが、安価に手に入れられるようになった。


最後にランディ氏は、インテル製の3Dカメラを紹介した。Intel D435 Depth Cameraは、深度計測が可能なカメラで、Intel T265 3D Cameraは物体の距離や位置を3次元に計測できるカメラ。


これらのカメラを活用することで、非GPS下でも飛行ナビゲーションや衝突回避が可能になる。実際に海外のエンジニアがD435カメラを搭載して屋内で衝突を回避する様子が動画で紹介された。



ローバーとマルチコプターによるデモンストレーション

ランディ氏は2つのデモンストレーションも行っている。ひとつめは、ローバーによる衝突回避システム。ローバーの前方に取り付けたカメラの映像をリアルタイムに解析して、障害物を検知してプログラムされたルートを自動で回避する。


障害物を検知するカメラが取り付けられたローバー


屋外で実施されたデモンストレーションでは、自動走行するローバーの前に立ちはだかると、その人物を検知して停止か回避の行動をとった。


人物を障害物と検知して停止するローバー


もうひとつのデモンストレーションは、T265センサーを使って、非GPS環境下で周辺の障害物などを認識した飛行。しかし、T265センサーは屋内環境で物質のエッジなどを捉えて認識するため、光量が強く目立った構造物のない屋外では、正確に周囲を認識できず、マルチコプターは安定した飛行を実践できなかった。


3Dセンサーで非GPS環境下での飛行を制御する仕組みを説明する塾長


3Dセンサーを搭載したドローンを手にする塾長


成功も失敗も含めて、常に前向きなランディ氏は、今後も日本のドローン産業や技術を盛り上げていくために、今日も新たな研究や開発に取り組んでいる。


ライター:田中亘

IT & ドローン ジャーナリスト

1990年代からIT系ライターとして活躍し、インターネットやWindowsにエンタープライズシステムなど、海外の先端的なテクノロジーから日本企業の取り組みまで、幅広く取材してきた。現在も、AIやIoTにクラウドなど、デジタルトランスフォーメーションに関連するテクノロジーや事例を中心に執筆している。特に、B2B向けのITサービスやソリューションに精通し、国内外のIT企業を数多く取材し、産業新聞や業界紙に寄稿している。この数年は、ワークスタイル変革やシンクライアント、仮想デスクトップなどのテーマで連載や事例の取材を数多く行っている。一方、イベント・セミナーや企業の勉強会などで講師も務め、大手IT系ベンダーのプライベートショーやイベントでは、セミナーのスピーチ原稿やシナリオなども執筆する。